多肉植物は、夏に水をやった後、突然腐ってしまう事があります。
一般的には「蒸れた」と表現される事が多いです。
なぜ「蒸れ」が起きてしまうのでしょうか。
原因はいくつかあると思いますが、一番深刻なのは糸状菌や腐敗菌の感染だと思います。
多肉植物の抵抗力が、糸状菌(カビ菌)や腐敗菌の増殖に負けてしまうのです。
糸状菌はどこにでいるありふれた菌で、土の中に潜伏しています。
乾燥させることで増殖を防ぐ事はできますが、胞子として残るので死滅させる事はできません。
空気中にも胞子がたくさん飛んでいる為、殺菌した土を使ってもそのうち付着してしまいます。
夏の水やり後に「蒸れ」が多発する理由を、多肉植物の抵抗力を「防御力」、糸状菌の増殖を「攻撃力」として、ゲーム風に解説してみます。
ー 冬 ー
冬は多肉植物の休眠期で、紅葉させる為に厳しい条件下で育てられる事も多く、多肉植物の防御力はとても低い状態です。
しかし、糸状菌は寒さ乾燥に弱いため、攻撃力は無いに等しいです。
水やりをしても、糸状菌は寒さで増殖できない為、攻撃力は上がりません。
結果、腐る事は無く、多肉植物の勝利となります。
ー 春秋 ー
春と秋は、多肉植物の成長期です。
活性が高く、防御力は大幅にアップします。
一方、糸状菌も活性が上がり、水やりで湿った状態が続くので攻撃力が大幅にアップします。
しかし、多肉植物の防御力が高いので、糸状菌の攻撃は効きません。
ただし、あまりにも長い間土を湿らせ続けると、糸状菌の攻撃力が上回ってしまうので注意が必要です。
ー 夏 ー
さて、問題の夏です。
上の数値は夏に乾燥した状態です。
暑さにより、多肉植物の防御力は下がります。
水やりの頻度が少ない事も、防御力の低下に繋がります。
糸状菌は高温を好むので、攻撃力は落ちませんが、乾燥させていれば増殖できないので攻撃力が上がることはありません。
ここに水やりをしてしまうと、状況が一変します。
水を吸う事で多肉植物の防御力は少し上がります。
しかし、糸状菌の好む高温多湿という条件が揃ってしまうので、糸状菌の攻撃力が一気に上がります。
結果、多肉植物の防御力を上回り、多肉植物の敗北となってしまいます。
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さて、上記を踏まえたうえで、夏に多肉植物を腐らせない為の対策を考えてみます。
・断水する
昔からよく言われている多肉植物を腐らせない対策です。
水をやらずに常に乾燥した状態にしておけば、糸状菌の攻撃力は上がりません。
秋に多肉植物の活性が上がり、防御力が高まるのを待つ作戦です。
効果的ではあると思いますが、水不足で葉焼けを起こす可能性が高まり、水切れで枯れてしまう恐れもあります。
限界まで水を切って、防御力が下り切った状態でやむなく水をやってしまうと、あっさり陥落してしまう危険もあります。
・適度に水をやりつつ、土の湿った状態を短くする
適度に水をやって、多肉植物の防御力を極力下げず、秋まで耐える作戦です。
土の湿った状態を短くする事で、糸状菌の攻撃力を上げさせない事が重要になります。
その為には、乾燥しやすい水はけの良い土を使う事と、風通しを良くする事が大事です。
水はけと風通しは、昔から夏越しには重要とされている要素ですね。
・時々、殺菌剤入りの水を与える(試行中)
糸状菌の増殖を抑え、攻撃力を上げさせない為に、殺菌剤を入れた水を与える作戦です。
弱った植物にやむなく水をやるときには、効果的なのではないかと考えています。
薬剤に頼らず、菌の増殖を抑える弱酸性の水を与える方法も試しています。
現在試行錯誤中の夏越し法です。